あなたの思考を、ちょっとだけエキサイティングにする。。
44田メディア対談、第5弾は有限会社ASOBOT クリエイティブディレクター:近藤 ナオ(こんどう なお)氏です。
■世の中の課題をクリエイティブに解決したい!
(近藤=近、赤木=赤)
赤:近藤さんとは、NPO法人78会の活動でご一緒させて頂く事が多く、その風貌も相まって非常に興味を持っていました。(笑)
近:どうも。(笑)
赤:以前から面識はありましたが、近藤さんがどんな仕事をされているのか、実はよく分かっていないんです。(笑) 本日はその点から近藤さんを紐解いていければと思っています。
近:僕は、ASOBOT(アソボット)という会社でクリエイティブディレクターとして働いています。仕事内容は多岐にわたりますが、共通している想いは「世の中の社会的課題をクリエイティブに解決したい」ということです。
赤:「クリエイティブに解決する」ってどういう事ですか?
近:例えば、肩こり(課題)に悩まされている患者(クライアント)がいるとします。患者は肩こりを解消したいが肩こりの原因が分かっていないため自分では解決出来ない。患者はその原因を知るために病院に行きます。病院では様々な検査を行なって、その肩こりの根本原因を解明します。ストレスからくるのか、運動不足からくるのか、を調べるのです。ここまではASOBOTも同じです。この後が違うのですが、もし肩こりの原因がストレスからくるものと判明した場合、病院ではストレスを解消する「お薬」を患者に投与し、肩こりを解決しようとします。
ASOBOTでは、その患者が「仲の良い友人や家族と一緒に大笑い出来る環境」を生み出し、笑っているうちにストレス解消になって肩こりが治っているという方法を取ろうとします。
赤:分かりやすい。(笑) 確かに、お薬を飲んで1人でじっとしているより、みんなでワイワイやりながら解決する方がよりクリエイティブな気がするし、僕もその方が好きです。実際にASOBOTで課題解決に取り組んだ事例ってどんなものがありますか?
近:例えば、日本国内の「難民問題」だったりするのですが、「難民」と「移民」の違いって赤木さんわかります?
赤:考えたこともなかったです。教えて下さい。
近:「移民」は経済的理由でお金を稼ぐために日本に来ている人達、「難民」は政治的問題だったり宗教的問題で国内にいると生命の危機があるような人達のことを言うのですが、日本には意外とたくさんの難民が来ている。たくさん難民は来ているのだけれど、日本の国が難民として認定しないと彼らは日本国内での就労もできない事が多く、補助金も得られない。つまり、生活していく為のお金が稼げないということです。しかも国側の理由で認定されない難民の方々が意外と多い。
例えば、国を持たない世界最大の民族といわれているクルド人は、トルコやイラン北部の中東各国に広くまたがって住んでいる民族なのですが、その一帯エリアは豊富な地下資源が取れることが分かっています。ここではいろいろとお話できませんが、トルコに住んでいるクルド人の中にも国からの迫害を受けている人々がいるようで、一部の方々は日本に難民として逃れて来ているのですが、彼らが日本国内で難民として認定されることは非常に難しい。何故かというと、日本とトルコは友好国として非常に関係性が強いというのも理由の一つかもしれません。
赤:そんな問題があるのですね。確かに、ニュース等では取り上げられないような社会問題がいっぱいありそう。
近:そういった難民の支援を行なっている「難民支援協会」という団体があるのですが、僕達が彼らと考えているのが「物資を与える支援ではなく、仕事を生み出す支援」という形なのです。例えば、先ほどのクルド人の場合であれば、クルド人のお母さん達が持つ伝統技法の一つで「オヤ」という特殊な刺繍技術があるのですが、普通に刺繍してそれを販売するだけでは、「お涙ちょうだい系」になってしまう。その解決方法はクリエイティブではないと思うのです。実際にどうしたかと言うと、東京コレクションにも出ているファッションブランドに商品企画をしてもらって「オヤ」という繊細な刺繍技術だから実現できる商品ブランドを生み出し、そのブランドを根付かせることで、クルド人のお母さん達に継続的に仕事を発注できる仕組みを構築しました。お母さん達も支援を受けるより、自分たちの技術を使って仕事ができた方が「気持ちが前向きになれる」と言って喜んでいました。この考え方は障害者や震災復興支援にも応用出来ると思っています。
■「仕事を生み出す被災地支援」が格好いい?
赤:確かに、まわりが障害者や被災者扱いをすることで、余計に元気がなくなっていく事例を聞いた事があるし、一万円のお金をあげるより、一万円の仕事を作るほうが、彼らが早く立ち直るきっかけを提供できるかもしれない。
近:実は、震災復興支援に関しては「仕事を生み出す被災地支援」が格好いいと思っています。僕と同い年で宮城県石巻市で牡蠣漁師をやっている後藤君という友人がいます。彼らの漁港も震災で機能しなくなっていて、しかも放射能の風評被害で相当なダメージを受けている。彼らの為に仕事を生み出す支援が出来ないものか?と考えていました。
赤:近藤さんと話していると、次はどんなアイディアが出てくるのかワクワクしますね。何を考えているのですか?
近:「山梨のワイナリー × 石巻の牡蠣」という企画で解決するのはどうだろう、と思っています。山梨には約80箇所のワイナリーがあって、11月のボジョレーの新種が出る頃には、それらのワイナリーを大型バスで巡るというワインツーリズムがあるのですが、冬場は中央アルプスの影響で雪が降りにくくて、観光ツーリズムがあまりない。行政側としても冬に観光客を呼べるコンテンツを求めていました。牡蠣は白ワインとの食べ合わせが良く、一緒に食べるのが美味しいと言われていますが、特に石巻の牡蠣は、太平洋の海流の流れが早く、深度の深い漁場で育っているので泥臭くなくて、非常に白ワインと合う。山梨の甲州白ワインと石巻の牡蠣がコラボすれば、お客さんを呼べるコンテンツにまで昇華出来るのではないかと思いました。しかもECサイトでセット販売をするだけではなく、石巻の牡蠣を山梨のワイナリーまで運んで、そこにワイン愛好家達が集って新しいコミュニティが生まれる所までデザインしてあげる事で、山梨も潤い、被災地も潤い、参加者も楽しめるというオシャレな企画になると思っています。牡蠣は10月〜5月までと楽しめるシーズンが長いので息の長い観光コンテンツが出来るという良さもあります。
赤:しかもその文化が根付けば継続的に収益が上がる構造が出来る。そして、「仕事を生み出す被災地支援」が可能になる。ですね? 実は44田寮にいるスタートアップ企業たちも、社会的課題解決から始まっているものが非常に多い。僕自身、44田寮を作ろうと思ったのも日本人の働き方をもっと多様にして、知的創造的な働き方を促進させたいとの思いからでした。そういった社会的課題をクリエイティブに解決するという感覚は非常に近いものを感じます。
近:僕も44田寮の考え方には非常に共感できるし、何か一緒に取り組めるのではないかと考えています。どうですか?「仕事を生み出す被災地支援」でコラボしてみませんか?
赤:いいですね、是非やりましょう!今から早速打合せなんてどうですか?(44田寮にいたスタートアップ企業をおもむろに集めだす)
近:赤木さんのそういう迅速な所、好きです(笑)
■44田寮 寮長 編集後記
近藤ナオ 氏を一言で表すと【巨神兵】である。その風貌だけでなく、世の社会問題に対しビームを発しながら突き進んでいくさまは火の七日間を彷彿とさせる激烈さを感じた。その一方、自分が取り組む問題に対しては徹底的に寄り添う覚悟や、それ故に自分を追い込む姿をこの対談からも感じることができた。
因みに「石巻の牡蠣×44田寮」プロジェクトも近日公開予定だ。
※巨神兵、火の七日間は「風の谷のナウシカ参照」
StartUp44田寮 寮長 赤木優理