あなたの思考を、ちょっとだけエキサイティングにする。。
元気な高齢者による、要介護高齢者への介護サービスを提供する。60歳以上の元気な高齢者を介護サポートスタッフとして派遣することで、介護業界の労働力不足を解消する。スタッフも週に3日勤務と無理なく働く事が出来る。2025年の介護分野における100万人の人手不足の解決を目標とする。
■介護問題と向き合う事で『 2つの世代が手を取り合う社会』が実現できる?
(新川=新、峯崎=峯)
峯:生命保険会社を60歳で退職された後、一念発起されて新しい「介護」という分野で起業をされたのはどういった理由があったのですか?
新: 『家族のように異なる世代が力を合わせ、新たな価値を生み出す社会』を作りたいと考えたからです。日本の社会は深刻な介護問題を抱えています。2025年には介護分野において、100万人の人手不足が訪れると言われています。沢山の若者が家族の介護の為に夢を諦めなければならないかもしれません。現在、すでに年金がもらえないかもしれない上に介護の負担も大きくなる「若者世代」と、すでに支払い終えた年金の受給に対して批判を受ける「高齢者世代」の間には深刻な溝が出来ています。このままでは、ますますその溝が大きくなってしまうでしょう。この問題に対する、私が提案するソリューションは、「比較的余裕がある高齢世代が、介護問題の解決を図り若者の負担を軽くする事」だと考えています。介護という仕事を細分化する事で、高齢世代にも出来る仕事を探しだし、若者には若者にしかできない仕事に専念してもらう。『労働の再分配』を行う事で介護に関する若者の負担減や、収益向上が可能になると考えています。
峯:僕の祖父も80代ですが、いまだに元気に働いています。確かに元気な高齢者の方々を活かしきれていないのは非常にもったいないですよね。体力、スピードを持った若者と、お金と時間を持っている高齢者が互いの長所を活かしながら協力をすれば様々な問題が解決する気がします。皆、理論的にはわかっているとは思いますが、なぜこのような社会が実現できていないのでしょうか?
新: 私は社会システムに欠陥があると考えています。例えば両親が共働きで、幼い子供の幼稚園のお迎えが出来ない家庭があるとします。そこで比較的時間に余裕のあるおじいちゃんが子供を迎えに行く。このような家庭は珍しくありません。しかし社会に視点を移すと全く状況が異なります。時間に余裕のある高齢世代がその時間を使う事で若者世代を助けるという事がほとんど出来ていません。このように「家庭」で出来ているのに「社会」では出来ていない事が非常に多い気がしています。
峯:確かに自分のおじいちゃん、おばあちゃんは大切にしようと思います。しかし “高齢者世代” と考えてしまうと、全く彼らとは別物のように捉えていまいがちですよね。私はその問題の原因のひとつは「家庭」と「社会」での考え方の違いにあると思うのです。「家庭」では “限られたパイ” を皆で分けようと考えます。一方で「社会」では “限られたパイ” をどうやって奪い合うか? を考えてしまいがちです。だから自分の納めた税金の使い道に対して自分に利益のあるように主張し合うのだと思います。社会システムを変える為には、この考え方を変える必要があると思うのですが、どのように変えればいいのでしょうか?
新:様々な世代が知恵を出し合い、共に汗を流す事で社会問題を解決する事だと考えています。それでも足りない場合はお金で解決する必要が出てきますが、現状はこの順番が違い、お金に頼りすぎている事で社会の仕組みがおかしくなっているのではないでしょうか? 国はまず予算から問題をどのように解決するかを考えます。しかし本来は汗と知恵を使う事がまず最初に必要で、お金は最後にくるものです。
■世代を超えて協力し合う、『共感社会』は果たして理想論で終わるのか?
峯:新川様は国の大きな問題である介護分野に60歳から切込み、世の中をより良くしようと疾走されています。非常にエネルギッシュでまさに「起業家」らしい価値観をお持ちですよね。
新:「世の中を良くしよう」と言われると、大変な事をする必要があると思われがちですがそんな事はありません。私は出来る範囲の行動でいいので、行動する事が一番大事だと思っています。例えば、ゴミ拾いに週に一度参加する事でも、震災復興ボランティアに参加する事でも、近所の高齢者の話を聞いてあげる事でも、どんな小さな事でも世の中は確実に良くなっています。現在、かい援隊本部の介護スタッフも無理のない範囲で勤務いただく事が非常に重要だと考えています。実際に働かれている方で、77歳のスタッフの方がいます。その方は、かい援隊の「社会事業」と自分の「問題意識」が合致している為、夢中で仕事に取り組めると話しをされていました。
峯:よく著名なビジネスマンが「評論家は要らない!行動を起こせ!」と言いますが、実際には多くの人が発言するだけで、行動に起こす人は少ないですよね。ただ私は「3.11」の大震災以降、日本人の意識が変化しているように感じます。政府に何も言われなくとも、多くの人が復興の為に寄付したり、ボランティアに参加をしたりしました。子供達も、少ないお小遣いから寄付をしましたよね。国民全員が『出来る事から少しずつ行動し、世の中をよくしよう』という意識が芽生えたように思います。
新:その通りです。先程も言いましたが、“知恵”と“汗”をかいて問題を解決する事が重要です。現在の日本は国も民間もお金ありきで問題を解決しようとしがちです。私は逆にお金だけでは問題は解決にならないと考えていて、まずは血が出るくらいに知恵を絞り、行動に移す事が先決だと信じています。その努力をする前にお金をばらまく事は、問題を先送りにしてしまうだけではないでしょうか?
峯:一人一人が持っている不安感を、知恵と行動によってまずは解決できないか考える。そして解決に努める中で出会う人々にその熱が伝わり、仲間が徐々に増えていく。するとそのグループに共感した人が10人、100人と増えていき、やがては大きなムーブメントになり社会を良くしていくわけですね。
新:一人の熱い想いや社会問題を解決する為のソリューションが共感を呼び、協力を呼び、最終的に社会を変えていく。志を持った若い起業家がビジネスを成功させるために知恵を絞り行動を起こす。その姿勢が新たな同志を呼ぶ。夢を大きく育てる為には高齢者の経験や資金力も必要になる局面もあるでしょう。いくつもの世代が一つの思いに共感し合い、互いの長所を活かし社会を良くする。様々な分野で共感から生まれる世代を超えたムーブメントが起きればいいですね。私はそんな世代を超えて協力をし合う『共感社会』を目指しています。
■峯崎の妄想時間
人には少なくとも1人は敵がいる。面倒な上司、アルバイト先のしつこい客等々……。オジサンは「若者はこれだから……」と若者を目の敵にして、若者は「おやじ達は頭が固い」とオジサンを煙たがる。メディアは、政治家や官僚のあげ足を取ることで国民共通の敵を仕立て上げ視聴率を狙う。なんとまあ日本には敵が多いことか……。新川さんとの対談を通し一つ大事な事に気付いた。それは「そもそも敵なんていない!」という事だ。敵になるのも、同志になるのも自分の考え方次第。今後は敵を作る事で安心するのではなく、自分とは違う世代・価値観の人とどう協力し合えるのか? を考えていこうと固く心に誓った対談だった。