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■NPO法人78会の目指す「トレード」という考え方
(吉岡=吉、赤木=赤)
赤:「NPO法人78会」のメンバーの皆さんにはいつも44田寮をサポートをして頂いていて、78会は様々な分野のエキスパート集団といった感じですが、78会は何を目的として結成されたのか? というお話からお聞かせ願いますか?
吉:「NPO法人78会」は1978年生まれ世代の様々な職種の人達で構成されています。経営者や企業勤めの方々、サムライ業や大学の先生、農家の方などです。しかし、78会に参加しているメンバーが共有しているテーマというか想いが一つあります。それは「まじめに日本を考える!」というテーマです。
日本は今、激動の時代を迎えていると思います。最近ではリーマンショックに象徴される超グローバル経済の影響力、twitter・facebookなどのWeb、IT技術の浸透によるビジネス環境の変化、3.11による死生観の変化などです。先人達が、戦後の復興・高度経済成長を通して育てて来た日本という国をこの激動期にこそもう一度見直し、日本の再興を行う必要がある! 私達はそれを「再考創(さいこうそう)」すると言っています。
赤:なるほど、「再考創」ですか! ”再び、考え、創る”ですね。 ただ、NPO法人に抱くイメージとして、非営利団体であるがゆえに、きれいなお題目ばかり言っていて結局何も変えられないケースが多いように思います。一般企業なら「お金を稼ぐ」という確固たる方向性が見えやすいんですが……。 78会の場合は、何かに取り組む時に「確固たる方向性」というものを何だと考えていますか?
吉:相変わらず手厳しい……(笑)。「確固たる方向性」とまでは浸透しきれてはいないですが、一つ心がけていることがあります。それは「トレード」という考え方です。
吉:一般的に、「トレード」は貿易、または売買という意味ですが、ここでいう「トレード」にはもう少し深い意味があって、「共存共栄」という大前提の上で始めて成り立つものという認識がある。例えば、ある所にお金持ちのおじさんがいる。彼は投資したいが投資商品に関する知識がない。また別の所には証券マンがいる。彼は投資商品に対する知識があり、運用する為の資金を求めている。この時点で、お金持ちと証券マンが出会えば取引が成立します。でもこの時点では「トレード」ではないと考えています。成立した投資でリターンがお金持ちに戻り、証券マンは運用手数料を得る。このサイクルが長年続く事でお金持ちと証券マンの間に信頼関係が出来る。そうして初めて「トレード」という共存共栄の関係だといえます。この取引から生じる信頼関係を忘れ、貨幣価値にばかり目を向けた為に、いびつな形にまで膨張した結果がリーマンショックだったと思います。
とはいえ、お金を稼ぐ事は悪いことではなく、むしろ前提条件です。NPO法人としても関わっていただく方々と社会に対して責任ある形で運営を行なっていくには当然お金が必要です。 お金ばかりに目を向け「共存共栄」という大前提が崩れてしまう事が悪いと思っているのです。
78会として、各メンバーが得意領域におけるスキルを発揮しあって、正常な「トレード」になっていない問題を「再考創」し、新たな「トレード」の種を生み出していくことが出来れば、と考えています。
赤:それは、凄く共感出来ます。日本の抱える問題の中には、昔は「トレード」だったものが、時代の流れに対応出来ずに今では「弊害」になってしまっているものが沢山ある。例えば最近注目されているスタートアップ企業やフリーランスのような個人的仕事形態での働き方を選択する人達がきちんと仕事出来る場が少ない。なぜなら、現行のオフィス賃貸では保証金などの初期コストがかかってしまったり、2年もの長期契約を強いられたり、変化の激しいスタートアップ企業のニーズに全くマッチングしていない。この問題の原因のひとつとして考えられるのが、不動産取引形態が昔からほとんど進化していないからだと思います。その問題を解決する為に、私は44田寮を作りました。不動産業で働く人間として「再考創」した結果が44田寮だったんだと思います。
吉:赤木さんは、不動産取引形態を挙げられましたが、そういった古い慣習・制度が現状に全くマッチしていない業界が日本には他にもいっぱいあるんです。僕たち78会が44田寮をサポートしようと決めたのは、古い不動産業界を赤木さんが変えようとしている姿勢が78会の目的と同じ方向を向いていると感じたからです。
吉:また、78会は「ふるさと活性化」を活動目的に掲げています。それは「ふるさと」を元気にしたい、「ふるさと」にこそ日本らしさや、日本の力が眠っているという想いを持っているからです。個人的には44田寮が、東京や世界市場と「ふるさと」との関係を再考創していく方々のリアルプラットフォームとしても活用出来ると思っています。ほんとに44田寮応援しています。後は共存共栄の「トレード」になる様に継続させないといけませんね(笑)
赤:それが結構大変なんですけどね(笑)
■CSAが日本と世界の農業のあり方を変える?
赤:NPO法人78会の具体的取り組みについて聞かせていただけますか?
吉:NPO法人78会では、現在4つのプロジェクトに取り組んでいますが、その中の一つとして、3年前から「78米プロジェクト」を立ち上げて活動していました。これは日本の農業と食卓のあり方を「再考創」する為のプロジェクトです。具体的には、昨年は山梨県の農家さんから田んぼを借りて、完全無農薬米を一般参加者を含む78会メンバーの手で育てるというものでした。
その年の天候で左右される農業の難しさや、完全無農薬だから生じる雑草との闘い等、やってみて初めて気付く問題もあった一方、初めて田植えを体験する大人達の楽しそうな声、カエルやドジョウに夢中になる子供達の表情など、農業の可能性を感じる事の出来るプロジェクトでもありました。ただ、やはり「トレード」を実現させる為には、継続的に生産者と食卓をつなげる仕組みを構築する必要があります。なにより、都心で働く自分たちだけで米作りをするのにも限界がありました。今後は地元の農家の方々と都心の我々、そして子供を囲む食卓とをより継続的につなげる方向に進化させるつもりです。その一つの形がCSA(Community Supported Agriculture)「コミュニティーに支援される農業 〜食卓と農業の共生関係〜」だと思っています。
CSAは、食の生産地と食卓について、直接的なつながりを持たせることで、生産者とそれを支援するコミュニティとの間に強力な関わり合いとパートナーシップを生み出すことを目的とします。それによって生産者側は購入者を確保することで安定的な収益を見込め、消費者側は自らのニーズにマッチした安全な商品を手に入れることが出来る。そして、78会は食の生産地と食卓を結びつけるプラットフォームを整備することで、日本の農業と食卓の新しい「トレード」を実現させようと考えています。
赤:その取り組みは面白そうですね。日本の農業にも過去のしがらみから発生する様々な弊害が存在する。3.11で注目された放射能の問題など、食に纏わる関心はますます高まる一方で、政府やメディアが生産者と消費者の間に入ることで正確な情報が伝わらないのではないか? と不安視する人も増えていますね。
吉:私も2児の親ですし、子供を持つ世代には非常に関心の高い問題だと思っています。また「ふるさと」と都心をつなぐ一つの有用なモデルだとも考えています。
吉:あとCSAを進めていった先の話ですが、日本の食文化は海外で勝負出来ると思っています。日本人の武器は、技術等をとことんまで考え抜き研究して新しい物に生まれ変わらせる勤勉さ、精密さ。そして、”おもてなしの心”に見られる様に、相手の状況をおもんばかって相手が喜ぶ物を提供していく精神性だと思います。単純に食材のクオリティという部分だけではなく、消費者が求めるものを提供しようとするサービス精神は世界中でニーズがあると考えています。また、日本の生産者がCSAによって世界中の消費者とつながることが出来れば、日本の生産者の技術向上へのモチベーションが高まるきっかけになるのではないかとも思っています。
赤:CSAの可能性が拡がっていきますね。では最後に吉岡さんから同世代のビジネスマンに一言コメント頂けますでしょうか?
吉:冒頭にもお話しましたが、今は激動の時代だと思います。僕たちの世代の役割はその激動の時代の中で、今まで受け継いで来たことを「再考創」することなのだと考えています。ただ、どんなに環境が変化しようが、ビジネスや取引の裏側には人間がいるという部分は変わりません。裏側にいる人間が幸せになり「共存共栄」できる形に「再考創」できるか否か? まずは身近な問題から考えてみることが大切なのではないでしょうか?
赤:そうですね、そして迷ったら44田寮に来て仲間達と話し合ってみる。そうすれば44田寮も活性化して「トレード」になってくると……(笑)本日は有難うございました。
■44田寮 寮長 編集後記
吉岡 宣善を一言で表すと【菩薩】である。それは彼が多くの苦労を積み重ねてきて、周りの人のお陰で今の自分があると感謝の心を常に意識しているからかもしれない。ゆっくり、一つずつ言葉を選びながら話す彼の誠実さに胸を打たれた対談だった。
彼が菩薩に見えたのは、最近めっきり丸くなってきた体型のせいかもしれないが……
StartUp44田寮 寮長:赤木 優理